2005年 03月 29日

滋賀県立琵琶湖博物館 参加型研究

滋賀県立琵琶湖博物館という施設がある。「湖と人間」というテーマを持って、琵琶湖周辺の自然、歴史、暮らしに関する資料情報の収集、保存、活用する運営によって地域固有の資産を発掘することに成功している。近年、ミュージアム・マネージメントのあり方が議論されるなかで、「地域資源の発掘、見直し」は外すことのできない運営方法といえる。しかし、その「地域資源の発掘(琵琶湖のことを徹底して掘り下げているのか、スゴイですね)」にだけ目を奪われてしまうと、この施設の運営の狙いを見逃すことになる。では、その狙いとは一体どんなものか。

この施設は資料情報のストックを利用できるようにするということを応用して、利用者年齢層(ターゲット)を拡大させ、リピーターの確保に直結させる機能を充実させている。施設の中長期目標にあげられている「資料活用型博物館」として、資料の収集し、利用者の必要に応じて利用、活用できるようにしている。情報ストックの利用である。しかし、ただ利用できるだけならば、図書館で本を借りることと変わらない。そこで一歩踏み込んで、その情報を利用した住民が研究や調査を行い、その内容を発信する機会を施設側で確保している。飛び入りで参加できる「身近な環境調査」、任期を設定して継続的調査を行う「フィールドレポーター制度」、詳細な調査を学芸員と協力して行う「グループとの共同による研究調査」と3つの「参加型調査」という住民と協働の研究活動を行っているのである。これらの研究形態は参加者の敷居の高低やテーマの難易度を分けることで、どの年齢層にも参加できる仕組みを作っている。これらの研究に参加した人たちは、自分の調査がどのように整理され、発信されるのか気になるだろうし、発信されたものの中に自分の情報が生かされている喜びや新たな発見を得る楽しさを得ることが出来るだろう。そして、施設で蓄積された情報を利用しながら新たな調査内容に参加する意欲を持ち、施設の資料情報を利用して知識や理解を深めようとするのである。資料情報のインプットとアウトプット機能の循環がここにはある。

また、こうした協働調査の推進やインプット・アウトプットの循環は、多くの人間が接触し、「対話」する場所を作りつつある。研究発表の場を提供することや、「はしかけ制度」のように参加した住民が施設の企画・運営を行うことは、参加した人間の価値観をぶつけ合う機会を施設で作ることといえる。このぶつかり合いは、研究や企画に参加した個人の地域に対する関心を高め、地域資源の再発見しようとする意欲をかきたてる。その過程で理解と知識を深めた住民は次に施設と「対話」しようとするだろう。施設としても、それは願っているところで、住民と「対話」を経ることで地域の見直しや施設運営の使命、目標、達成基準、業績を磨き上げようとする。HP上の「中長期目標」に掲げている2015年の到達目標「対話支援型博物館」に向け着実に運営を進めていると言えるだろう。

地域と向かう合うという今やミュージアム・マネジメントの基礎となることを始点としつつ、「参加型調査」という人と知識が交差するシステムを作り、施設運営に参加する住民を増やし、「対話」させる。それにより、施設運営の「民度」とマネジメントの強化を図る姿がそこにある。マネジメントが暗礁に乗り上げている他の施設は「ウチでもやってみよう」と飛びつきたいところだろう。しかし、このシステム構築のプロセスを参考にするならまだ理解はできるものの、コピー運用は地域差があるため望ましくない。飛びつく前に、各々の施設や周辺地域、住民の意識を入念に把握して、地域ごとに応じた方法を吟味することから始めるべきだろう。
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by stoneroses8010 | 2005-03-29 22:16 | 我思ふ


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